イールドカーブコントロール導入背景や効果
2024年04月19日
イールドカーブコントロール導入の背景や効果
今回は「イールドカーブコントロール(YCC)」をテーマにお送りします。
前回の記事では、マイナス金利の導入の背景や導入の効果についてお伝えしました。
住宅ローンが歴史的な超低金利となり恩恵があった一方で、銀行の収益悪化などの副作用もあったことで、バランスをとる必要がありました。
そこで導入されたのが、イールドカーブコントロールなのです。
イールドカーブコントロールとは
画像:Adobe Stock
イールドカーブとは、金利と返還期間の関係をグラフに表したものです。縦軸に金利、横軸に返還期間を設定し、曲線状のグラフが描かれます。
カーブの種類は順イールドと逆イールドのふたつに区別されます。曲線の変化はスティープ化とフラット化に分けられます。
イールドカーブコントロールとは、イールドカーブを操作して金利を調整する政策のことです。
順イールド
順イールドとは、イールドカーブが右上がりに上昇している状態を指します。債券を返還するまでの期間が長くなればなるほど金利が上昇する状態を示しています。一般的に返還期間が長期化すれば返還されないリスクも高まるため、期間が長くなれば金利が上がるカーブを描きます。よって、通常時のイールドカーブは順イールドの状態になります。
逆イールド
逆イールドとは、返還期間が長くなるほど金利が下がる状態のことです。お金を早く返さない人に金利を低くし、すぐ返してくれる人に金利を高くすることは通常考えられません。よって、通常時に逆イールドの状態になることはなく、逆イールドの出現は景気後退のサインとされています。
スティープ化
スティープ化とは、イールドカーブの形状変化を表す言葉です。一定の返還期間を過ぎると急激に金利が高くなるなど、長期金利と短期金利の差が大きくなればなるほどカーブの曲線が急になります。このような状態をスティープ化といいます。スティープ化は、将来の金利上昇が予想され、債券が急激に売られる場合などに出現します。
フラット化
フラット化も同じく、イールドカーブの形状変化を表します。返還期間が長くなっても金利がほとんど変わらない場合、カーブの傾きが平坦になります。長期金利と短期金利の差がほとんどない状態がフラット化です。フラット化は、今後の景気動向が読みにくい場合など、金利の見通しが不透明な場合に出現します。
イールドカーブのフラット化を是正する
なぜイールドカーブコントロールが導入されたのでしょうか。
一言でいえば、マイナス金利政策で起きてしまったネガティブな側面を解消するためです。
マイナス金利政策により、短期金利だけでなく、国債の長期金利が下がり、イールドカーブがフラット化しました。結果的に国内の金融機関が預金から得る預金利息が減少し、収益が圧迫されてしまいました。
そのような事態を改善するため、2016年9月に導入されたのがイールドカーブコントロールです。
短期金利ではマイナス金利を維持しつつ、長期金利を0%付近に抑えることでイールドカーブの極端なフラット化を防止し、景気回復へと導く狙いです。
ではどのようにして長期金利が0%付近になるよう調整していたか……ひと言でいえば、「国債の買入れ」です。
国債は本来、自由取引です。金融機関だけでなく、個人の投資家が自由に売買できるものです。国債を日銀が買入れることで、買える国債の数が絞られるため、需要が高まります。それにより国債の価格が上昇し、利回りが下がります。
このように、長期国債を日銀が買入れることにより、長期金利を0%付近で調整していました。
イールドカーブコントロール、修正から廃止へ
イールドカーブコントロールは以下の時系列で修正され、先日3月19日に廃止が決まりました。イールドカーブコントロール政策が解除されると、市場金利が再び自由に動き始めます。これにより、住宅ローンの金利は上昇する可能性があります。そのため、これから住宅購入を検討している方は、金利上昇に備えて計画を立てる必要があります。
2022年12月20日:長期金利の許容範囲が±0.25%から±0.5%に引き上げ
2023年 7月28日:長期金利の上限が事実上1.0%に引き上げ
2023年10月31日:事実上の上限であった1%を一定程度超えることを容認
2024年 3月19日:イールドカーブコントロールの廃止が決定
まとめ
・イールドカーブコントロールとは主に長期金利の操作をすること
・マイナス金利による副作用改善のために導入された
・廃止により、将来的に住宅ローン金利が上昇する可能性がある