マンション管理規約のペット飼育について
2022年10月14日
マンション管理規約で定められる「ペット飼育」について
ペットと暮らすのが珍しくなくなった昨今。時代を遡れば2度のペットブームを経て今に至ります。
第一次ペットブームは80年代後半から90年代初頭。ラブラドールレトリバーなどの人懐っこい性格の大型犬が人気になり「番犬から家族へ」の意識変化がありました。ペットに残飯を与える家庭も減り、ペットフードの消費が拡大します。
第二次ペットブームは90年代後半から2000年代初頭。背景にはペット可マンションの増加があります。
国土交通省が97年にマンション標準管理規約を改正し、ペット飼育を「管理規約に定めるべき事項」としたことを機に、不動産会社がペットと一緒に暮らせるマンションを積極的に売り出すようになり、2000年前後からペット可マンションが急増しました。
このように、ペットブームを支えた背景のひとつにマンション管理規約があります。
そこで今回は、マンションにおけるペット飼育のキーとなるマンション管理規約を掘り下げます。
管理規約の役割とは
管理規約とは、いわばマンション全体の法律のようなものです。
快適な暮らしを維持するため、国土交通省が作成した『マンション標準管理規約』をもとに作成されたマンションのルールのことです。ペット飼育も、多くの場合は管理規約によってルールが定められています。管理規約は所有者だけでなく、賃貸人(借りている人)にも有効です。
使用細則は、管理規約をもう少し具体的にしたイメージです。
建物・敷地・附属施設の管理や使用について定められます。管理規約では基本的なルールを定めておき、使用細則でより細かくルール化していくのが一般的です。管理規約でペットの飼育可否を決め、使用細則でペット飼育時の手続き方法や飼育ルールを細かく定めるといった感じです。
なぜ、わざわざルールをつくるのでしょうか。
マンションには家族構成や生活スタイルも異なる様々な人が暮らしています。そのため、明確なルールがなければトラブルが発生しやすくなります。とりわけペットに関しては音や匂いなどがトラブルの元。ルールを定めることでトラブルを未然に防ぐと同時に、トラブル発生時の責任の所在についても定める役割を担います。
ルール改定には一定数の賛成票が必要です。管理規約は議決権の3/4以上。使用細則は議決権の過半数が必要になります。
つまり、ペット禁止マンションをペット可マンションへとルール変更するためには、3/4以上の賛成が必要になるので、かなりハードルが高いことが分かります。動物アレルギーなどで、あえてペット禁止マンションを選んでいる人もいるのです。
ペット禁止のマンションでペットは飼えるか
ルールを守らないとどうなるのか。管理組合は管理規約の違反者に対して、ペット飼育の禁止を求めることができます。実際に裁判例もあります。ペット禁止マンションでペット飼育者に対し、管理組合がペットの飼育禁止を求め、裁判所はその訴えを認め、ペットを飼育してはならないという判決(東京地裁平成19年1月30日判決※1)を下しました。
ペットは暮らしに癒しと潤いを与えてくれる家族同然の存在です。
一方で、好ましく感じない人にとっては騒音や匂いなど、自分たちの生活を脅かす迷惑な存在でしかありません。
ひとつ屋根の下で共同生活を営む以上は、管理規約などのルールを拠り所として、ルールを守った上で生活することが求められるのです。
※1 ペット禁止の管理規約/公益社団法人全日本不動産協会