年収700万円でも住宅ローンに落ちるワケ
2021年06月11日
年収700万円の人でも住宅ローンに落ちるワケ
ずっと狙っていた物件。しかも希少な角部屋。ということですぐに内覧予約をしたN様。リフォーム前で内装は傷みが激しかったのですが、リノベーション前提のN様にとってはむしろ割安で手に入れられるので好都合。即決で購入申込書を出しました。しかし、その後まさかのローン落ち。ショックを隠せないNさんに掛ける言葉が見つかりませんでした。
今回は実際に筆者が経験した「住宅ローン落ちた」事例を取り上げます。ローンが通らないのには必ず理由があります。その理由を知ることで、少しでもローン落ちのリスクを減すことに繋がります。ローン落ちという哀しい状況を一人でも多くの方に避けて頂く、これがこの記事のテーマです。
銀行は「物件」と「人」で審査する
銀行は住宅ローンを貸す際に、大きく分けて「物件」と「人」の二つの側面から審査します。「物件」は主にエリア、築年数や構造などから担保価値が十分あるかをみます。「人」は主に年収や年齢、返済比率などをみます。民間の銀行は「人」重視で審査するのに対して、住宅金融支援機構が扱うフラット35では「物件」重視で審査される傾向にあります。
総合的な判断で否決
では、どんな人が、どんな物件で審査に落ちてしまったのか。
N様のプロフィールと買いたかった物件を見てみましょう。
■N様と物件のプロフィール
・50代夫婦
・年収:700万円
・勤続:30年以上
・会社役員
・購入予定物件:昭和48年築(2021年時点で築48年)
・借入額:2300万円(物件+リノベーション費用)
・現在の借入:80万円(バイク)
年収700万円ある会社役員のN様はなぜローン落ちしたのか。事前審査をした2つの銀行の融資担当者に聞くと、「総合的な判断。ただ、延滞は無かったです」とのこと。実は個人情報の観点から、銀行担当者はローン否決の理由を明確に教えてはくれません。いくつかヒントとなる情報をヒアリングできたので、それを元に否決理由を考えてみます。
①年齢が50代であったこと
借入期間が短くなるため、返済比率が上昇します。返済比率は年収400万円以上なら35%まで借入可能とされる場合が多いですが、今回の場合、返済比率は17%でした。※2300万円を返済期間20年/金利0.775%で試算。
②他の借入があったこと
80万円の借入の月々返済額は約8万円。この借入も加味して審査されます。住宅ローンの返済と合わせると、返済比率は29%です。これで返済比率の上限35%まで近づいてきました。
③役員であったこと
実は役員はローンが通りにくいと言われています。一般社員と比較すると解雇される可能性が高くなること、会社の業績によって給与が変動しやすいこと、つまり不安定だとみなされるのが理由です。
購入予定物件が築古であったこと
築48年となると審査できる金融機関が限られます。
以上4点を総合して考えると、①②により、返済比率が上限ギリギリまできていたところに、③役員という不安定な要素が加わり、更に④物件の築年数が48年だったこともあり、否決になったものと考えられます。
ネガティブ要素はひとつでも少ない方がいい
前述した要因はひとつだけなら、クリアできたかもしれません。これが複数絡み合うと今回のように「総合的な判断」で否決になる可能性があります。よって、これから住宅ローンを借りようという方はひとつでも思い当たる要素がある場合は、できるだけ早めに潰しておきましょう。少なくとも、今ある借入は完済しておくのがベターです。