準防火地域で建ぺい率が10%緩和

2021年10月29日

準防火地域で建ぺい率が10%緩和

準防火地域で建ぺい率が10%緩和

 

「宵越しの銭はもたねぇ」

 

江戸っ子気質を表したこの言葉。江戸っ子はなぜ宵越しの銭を持たないのかご存知でしょうか。それは江戸時代における火事の多さにあります。頻繁に大火事に見舞われる江戸では、貯めておくリスクの方が大きかったという説もあります。現代でも毎年多くの火災による被害が出ていますが、今回は火事に関連した建築基準法の改正について解説していきます。

 

建ぺい率によりプランの選択肢が増える

賃貸オーナーやこれから家を建てる方にとってはメリットがある法改正です。これまで防火地域内の耐火建築物は、建ぺい率を10%緩和する」という緩和措置がとられていましたが、令和元年6月に建築基準法が改正され、改正後は現行に加えて「準防火地域の耐火建築、準耐火建築物の建ぺい率を10%緩和する」とされました。

 

家賃相場の高い市街地で賃貸住宅や賃貸併用住宅を建てる場合、建ぺい率10%緩和は賃貸オーナーにとってインパクトが大きいです。土地面積200㎡で建ぺい率が60%の場合、建築面積が120㎡から140㎡(10%緩和後)に増えます。面積が20㎡増えれば、約12畳分の賃貸スペースが増え、3階建だと約36畳分増やせることになります。

 

これから土地を買って、家を建てる方にもメリットがあります。例えば、建ぺい率60%のエリアならば、70%になり、特に狭小敷地においてはこの10%は大きな差になります。駅近の便利なエリアでは駐車場を設けない戸建ても増えています。駐車場を設けずに70%の上限で建物を計画すると1フロアをゆったりとプランニングすることも可能です。

 

改正の背景に糸魚川市の大規模火災

法改正の背景には、2016年12月に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災があります。火災が発生した現場は「準防火地域」で、古くなった木造の建物が密集していたこともあり、広範囲に燃え広がり、30時間以上も燃え続けました。そこで今回の改正は「密集市街地等において、延焼防止性能の高い建築物への建替え等を促進」することを目的に行われました。

 

防火地域・準防火地域とは、市街地の火災の被害を最小限にするために定める地域。この地域内の建物は一定基準を満たした構造としなければなりません。しかし、大規模火災が発生した地域は、準防火地域であるにも関わらず古い建物の建替えが進まず、現行の基準を満たさない建築物が多かったことが被害拡大につながったという背景があります。

準防火地域地図

写真:静岡県内における防火地域・準防火地域の一例

 

静岡県を例にすると、新静岡駅付近や静岡市役所付近の赤枠で囲われているエリアは防火地域です。その周りをぐるっと覆うように囲まれているエリアが準防火地域です。このように市街地の利便性の高いエリアに指定されることが多く、このエリアでの建ぺい率が10%緩和されるということになります。

 

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